今月はじめに読んだこの著者のデビュー作『感染』に続く医療ミステリー第二弾!
元大手新聞社記者で現在フリーライターの女性深沢岬は、仕事の依頼で待ち合わせたホテルのロビーで、ベビーカーに乗った赤ん坊を目の前に放置され、「その子はあなたの娘だ。引き取ってもらいたい」という電話を受ける。出産どころか妊娠の経験もない岬だが、唯一思い当たる前歴があった。
たった一つの手がかりを追ううちに産婦人科医殺人事件の容疑者になってしまう岬。「前歴」をどうしても隠さねばならない彼女は、刑事から逃亡しながら、記者経験を生かして真相究明に奔走する。
主人公と刑事、真犯人との緊迫しためまぐるしい攻防がページを駆ける。やがて明かされる真実。『感染』と同様に最近の医学(生物学?)テーマを取り込んだ医療ミステリーが面白くて、文庫本317ページを1日で読んだ。
2009年06月29日
転生
2009年06月27日
新聞が面白くない理由
[目次]
プロローグ
第1部 記者クラブの堕落
国民の税金で接待される新聞記者たち
新都庁の豪華記者クラブ
宮内記者会の「白紙領収書」
便宜供与で曲がるペン
「権力の監視機関」か「利権の受け皿」か
新聞記者操作マニュアル
第2部 朝日新聞社の正体
朝日のリクルート汚染
広告掲載拒否事件
朝日のタブー「情実入社」と「天下り」
トップ人事の後遺症
権力から独立できない「社会の公器」
サイドビジネスの陥穽
押さえ込まれる社内言論
第3部 消えるジャーナリズム精神
新聞記者が巻き込まれた『論際』汚染
他のメディアの記者を排除する新聞記者
新聞に個性と魅力が問われるとき
衰退一途の日本のジャーナリズムの根本の病巣が「記者クラブ」の存在にあると説く第1部では、官公庁と癒着を続ける記者クラブの闇を暴く。記者クラブは官公庁だけでなくそれに準じる民間企業にまで巣食っている。広いスペース、税金から支出される通信費、光熱費……。官公庁から便宜供与を受けて他のメディアを締め出す。
記者クラブに税金がどの程使われているのか、その結果として報道がどれだけゆがんだものになっているのか、行政側と報道側の両者の問題点が明らかになっていく。
他者を批判する限りは、自らの襟を正しておかなければならないという基本的な倫理観が「新聞」には欠如している。 第2部では、記者クラブから離れて、大新聞社の腐敗を一例にあげて、日本の大手ジャーナリズムを批判する。
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2009年06月01日
2009年05月17日
丸腰国家―軍隊を放棄したコスタリカ
[目次]
第1部 「丸腰国家」コスタリカの真実
第1章 コスタリカはどうやって軍隊をなくしたのか?
第2章 軍隊がなくても大丈夫なのか?
第3章 コスタリカには本当に軍隊がないのか?
第4章 コスタリカは軍隊を持てるのか?
第2部 「丸腰国家」をつくる人たち
第5章 コスタリカ人とはいかなる人たちか?
第6章 コスタリカ人が考える平和とは何か?
第7章 コスタリカは「平和のパラダイス」か?
第8章 還暦を迎えた「軍隊をすてた国」)
中央アメリカの国コスタリカは、1948年に軍隊を放棄して「丸腰」になった。その歴史や国民性を見ていく。軍隊がなくてもやっていけるのか、ほんとうに軍隊がないのかを検証していく。
非武装を「理想」として見るのではなく、「現実」に軍隊をなくした国。軍事費をなくすことで、その分を教育や医療にまわせる。その結果、教育も医療も無料だという!
コスタリカが軍隊なしにやっていけるのは、国の規模・地政的な位置付けや米国をはじめとする周辺国との関係が大きく作用している。他の国が同じように「丸腰」でやっていけるのかどうかの普遍性を考える上では、それほど参考にならないのかもしれない。でも、ひとつの実例がここにあるという意味では、やはり注目に値すると思う。
第1部では、歴史や現状をできるだけ客観的に解説している。
第2部では、自分の体験を示しながら、コスタリカの「人」がどんなであるかを見極めようとしている。「平和」に対する、コスタリカ人と日本人の見方の違いが興味深い。
第6章の終盤で、「刑務所には塀がない」という項があり、囚人たちが楽園の住人のような生活をしているが、それは、「彼らが犯罪に走ったのは、人権というものを深く理解していなかったからです。それは彼ら自身の人権が尊重されなかった証でもあります。だから、ここではまず、彼ら自身の人権をできるだけ尊重することで人権意識を目覚めさせ、更生を図っているのですよ」という考えからなのだという。「目からうろこ」的な考え方だなと思った。
第7章では、コスタリカが「平和のパラダイス」なのか?を見ていく。非武装とどこまで関係しているかは論議せずに、政治腐敗・政治不信・貧困・環境破壊・賄賂の横行・人権問題など、負の現状が提示されている。前章で、教育や医療の場での無料化、「環境先進国」などの明るい現状が語られただけに、この章での影の一面は印象的だ。
2009年04月25日
iPS細胞:「遺伝子なし」で成功
2007年11月に山中伸弥・京都大教授が開発した(ヒト細胞での成功を発表)iPS細胞は、ウイルスを使い4つの遺伝子を細胞の核に入れて作られたが、今回の米独の研究チームが開発したものは、まだマウスの人工多能性幹細胞(iPS細胞)という段階だが、遺伝子を細胞内に入れずに作る新手法である。
遺伝子の影響で起きうる細胞のがん化を防ぎ、治療に使える安全なiPS細胞の作成法につながる重要な成果で、世界の研究者が目指していた「遺伝子ゼロ」のiPS細胞が初めて実現した。24日、米科学誌「セル・ステムセル」で発表した。ということである。
たんぱく質(プロテイン)の頭文字を取り、「piPS細胞」と命名されとということで、今後、同じ手法がヒト細胞でも実現するかどうかだが、さらなる成功を期待したい。
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2009年04月20日
わかりやすい iPS細胞 の本
[目次]
はじめに
1章 “ES細胞”は生命の起源にさかのぼる
2章 細胞の先祖返りしないわけ
3章 なぜ身体は古びないのか?
4章 再生はいつも身体で起きている
5章 再生医療の時代へ
6章 iPS細胞が誕生した!
7章 再生医療レースのはじまり
8章 再生する力で人工臓器をつくる
終章 “知”がヒトを変えていく
あとがき
これまで読んだ素人向けiPS細胞の解説書のなか(そんなに多くないけれど)で、素人の私に最もわかりやすい本だったなと思う。
再生、幹細胞、ES細胞、クローン技術の話から順を追った十分な解説があり、ES細胞とiPS細胞の違いや位置付けがよくわかった。そして、現時点でiPS細胞研究が抱えている問題点も提示され、再生医療の観点からiPS細胞にどれだけのものが期待できるのかもわかった。
iPS細胞ができたから万事解決というわけにはまだまだならないらしい。まだ大学院博士課程在籍中だという著者の今後の活躍にも注目したいなと思う。
2009年04月08日
イントゥルーダー
昨年8月に同じ著者の「ペトロバグ」という小説を読んで面白いなと思ったが、この作品も面白かった。
1999年単行本発出で、サントリーミステリー大賞・読者賞ダブル受賞作ということだ。
表紙裏扉に書いてあるあらすじに、 25年前に別れた恋人から突然の連絡が。「あなたの息子が重体です」。日本を代表するコンピュータ開発者の「私」に息子がいたなんて。このまま一度も会うことなく死んでしまうのか…。奇しくも天才プログラマーとして活躍する息子のデータを巡って、「私」は、原発建設がからまったハイテク犯罪の壮絶な渦中に巻き込まれていく。
とある。
発端から終結までの行き詰まる10日間、読み始めたらとまらない一気読みの377ページ。
2009年03月18日
邪馬台国はどこですか?
[目次]
悟りを開いたのはいつですか?
邪馬台国はどこですか?
聖徳太子はだれですか?
謀叛の動機はなんですか?
維新が起きたのはなぜですか?
奇蹟はどのようになされたのですか?
「タイムスリップ釈迦如来」から読み始め、「タイムスリップ明治維新」、「タイムスリップ森鴎外」とこの著者の小説を読んできたが、その"解説"に必ず記述が出てきたのがこの本で、気になっていたがようやく読むことができた。
釈迦や明治維新、森鴎外に邪馬台国を扱った話がどう関係しているんだろうと思ったが、本を開いたら納得した。タイムスリップシリーズのような1話完結の長編小説ではなく、短編6話収録という体裁だ。ただし、バラバラの6話ではなく、カウンター席だけの地下一階の店に客が三人集まって歴史談義をするという構成で、"歴史ミステリ連作集"というらしい。
在野の歴史研究家らしい謎の人物宮田六郎が語る奇想天外な仮説は、某私立大学文学部の世界史の助手早乙女静香との論戦が必至。初対面の日の論戦は、「ブッダは悟りなんか開いてない」という宮田の爆弾発言から始まった。この話が、「タイムスリップ釈迦如来」に発展していったような気もする。
そして、再開の夜は、邪馬台国がどこにあったかという問題。宮田の説は、九州説でも畿内説でもなく、なんと東北岩手だという。彼の話を聞いているうちに、その説に私は納得してしまった。最後に示された邪馬台国を示唆する有名な地名に、なぜ今まで一度も連想しなかったのかと逆に不思議に思えたほどだ。
2009年02月26日
江戸の歴史の意外な論説
[目次]
はじめに
第1章 誰も書かない女将軍・家重
第2章 虚像と密約だらけの徳川家康
第3章 世を揺るがした大事件の真相
第4章 大名たちの七転八倒
第5章 混乱と動乱―幕末の真相
1冊まるごとで「九代将軍は女だった」と説く本だと思って読み出したが、目次の通り、全5章のうちの第1章のみが家重は女将軍だったのではないかという話だった(52ページ/全200ページ)。しかし、解剖学や文献学その他のデータを用いての論はすこぶる興味深かった。「徳川幕府が隠蔽していた驚愕の史実」が楽しく読めた。
副題の「平成になって覆された江戸の歴史」は、「九代将軍は女だった」を言い換えたのではなく、これこそこの本の全体の内容を示す真の題名ということのようだ。
第2章は家康がらみの話で、通常の「日本史」ではあまり語られない人物が登場して面白かった。3代将軍が家光になった事情なんてのも面白い。
第3章は忠臣蔵や大塩平八郎の乱などの大事件の「真相」。「不通」という言葉の意味を知った。戦国時代から引きずる大名間の代代の冷戦状態のことだそうで、ロミオとジュリエット以上に家と家の対立が大変そうだ。
2009年02月21日
「変身」 by 東野圭吾
世界初の脳移植手術というのを題材にしたメディカル・サスペンス・ミステリー。脳移植を受けた男の自己崩壊の悲劇。
それまで画家を夢見ながら優しい恋人を愛していた工場勤めの平凡な青年・成瀬純一は、ある日突然、拳銃強盗の現場に居合わせて、頭部を銃撃される。
彼の頭に世界初の脳移植手術が行われた。手術成功に喜ぶスタッフ。しかし、純一は手術後徐々に性格が変わっていく自分を自覚する・・・・。
「脳移植手術」っていうのは、脳の持ち主と脳以外の身体の持ち主のどっちがドナー(臓器提供者)でどっちがレシピエント(臓器移植患者)になるんだろう?移植後の意識(記憶その他)はどちらのそれになるんだろうなんて思い、そしてこの主人公への手術は、成瀬純一の身体に誰かの脳が移植されたのか、それとも成瀬純一の脳を誰かの身体に移植したのかなんて疑問に思った−−前者だと銃撃以前の成瀬の記憶があるはずがないし、後者なら頭部を銃撃されたが故の手術だということに矛盾しそうだ−−。
読み進むうちに銃撃のダメージは右脳の一部のみで、脳移植は右脳の一部分に部分的に行われたということで、手術後の成瀬に手術前の成瀬の記憶が残っていることに納得がいく。そして話は、移植された他人の右脳の一部と成瀬本人の脳のせめぎあいになる。
絵が描けなくなる、音に敏感になる、性格が攻撃的になる、・・・徐々に侵略してくるドナーの脳の影響。画材店で働く恋人を愛したいのに愛する気持が消えてゆく…、職場の人間とは軋轢を生む。
「変化」のために勤務ができなくなり、恋人は去る。次第に明らかになりそして広がっていく平凡な男を待ちうけていた過酷な運命の悪戯!別人になっていく恐怖と戦いながら、純一は自分に移植された悩の持主の正体を突き止めようとする。








