2010年01月25日

当確への布石

第5回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞受賞作(受賞作品を大幅改稿して単行本発刊)の文庫化。
大学の准教授をしている女主人公は、TVのワイドショー番組の有名コメンテータでありかつ犯罪被害者救済活動を続けてきていた。そんな彼女が衆議院統一補欠選挙への出馬を決めると、元犯罪者のプライバシーを侵害するビラ撒きで騒ぎを起こす団体「凶悪犯罪抑止連合会」から推薦状が届く。戸惑う主人公は、教え子の夫である元刑事に相談する。

抑止連の正体は?選挙の行方は?−−−上巻は、比較的シンプルに選挙戦と抑止連の捜査を描くが、下巻になると話は一挙に複雑化していく。
雑誌記者の書く記事に振り回される選挙運動、抉り出される女主人公の過去、主人公の周辺登場人物のそれぞれの過去も"現在"に絡んでくる。抑止連首謀者とそれに連なる人物たちの思惑・・・。

網の目のように関連づく補選のカラクリが次第に見えてくる。ミステリーであり、「本格選挙小説」であり、犯罪被害者問題を問う社会小説でもある。実に面白かった。でも、結末はちょっとあっけなかったかなあ・・・。

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2010年01月09日

脳内出血

身元不明の変死体と論文捏造という珍しい組合せを題材にした医療ミステリー。

昨年、この著者の本を何冊か--「摘出」、「瘢痕」、「昏睡」、「特効薬」、「全身麻酔」、「死の点滴」--読んだ。これらは、手術ミスや薬剤使用ミス、新薬開発などにからんだ医学・医療界の闇を描く医療ミステリーで、面白くて次々と読んだのだが、この作品「脳内出血」は少し異色だ。医学部がらみの話ではあるが、むしろ刑事もののミステリーとしての要素が強い。舞台は、医学部ではなくて理学部や工学部でも成り立ちそうだ。
その分、医療ミステリーとしても刑事ミステリーとしても中途半端と言えるかもしれない。
身元不明死体の身元も犯人も「種明かし」の前にわかってしまうし、最後の「どんでんがえし」はまるで必要性を感じない「お笑い」ネタになっている。

医療ものとしても刑事ものとしても中途半端というのが、ある意味この本の魅力かもしれない。その分気楽に読める。
論文捏造に関係する登場人物のそれぞれの立場が面白いというか、楽しめた。

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