2010年03月10日

「廃用身」

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廃用身 (幻冬舎文庫)
久坂部 羊
2003年単行本 2005年文庫化

文庫本裏表紙の内容説明には以下のようにある。

廃用身とは、脳梗塞などの麻痺で動かず回復しない手足をいう。神戸で老人医療にあたる医師漆原は、心身の不自由な患者の画期的療法を思いつく。それは廃用身の切断だった。患者の同意の下、次々に実践する漆原を、やがてマスコミがかぎつけ悪魔の医師として告発していく―。

私は廃用身という言葉も知らなかったが、そのような手足を持つことの苦痛や介護の大変さをこの本で知った。

麻痺で身体のお荷物になった老人の四肢を切断する治療が「Aケア」。その治療は本当に患者のためになるのか・・・「患者」は四肢を切断したことを後悔してはいないのか?介護する側(家族そして介護従事者)はどうなのか?
あるときは自分を「患者」の立場にして読む。あるときは、「患者」の家族の立場になって考える。介護従事者になったり医師の立場にもなる。
かなりショッキングな内容であり重い話だが、どんどん引き込まれた。

小説は、「Aケア」を考案した医師漆原の自著による「Aケア」療法紹介書とそれに付記された異様に長い編集部註で構成されている。
前半は、漆原の「Aケア」療法の自著本文である。療法を考案するにいたる経緯、手術第一例から最終例までの顛末が記されている。療法考案者側の視点からは「Aケア」療法がすばらしい療法に思えてくる。

後半は、編集者がこの本の出版前後の「Aケア」がらみの騒動の顛末を記している。「Aケア」療法を悪魔の所業だと糾弾するマスコミによる一連の記事を取り上げ、その内容を検証した編集者矢倉の見聞記である。記事は糾弾側の視点であり、見聞記は比較的中立的立場である人の視点で「Aケア」が語られる。読みながら、前半の漆原自著を読んでいたときとは、「Aケア」に対する自分の評価が微妙に変わってきているのがわかって面白かった。

前半の手記では順調で効果的に思えた「Aケア」療法だが、後半に入ると療法を糾弾する報道があり、医師漆原は追い込まれていく。はじめは報道に反論せずノーコメントを貫いていた彼は、やがて反論し失踪しそして終幕を迎える。漆原は?患者は?患者の家族は?・・・漆原の家族は?漆原の友人知人は?・・・波紋は広がる。
医師漆原は純粋に患者のためをだけを考えて患者に療法を薦めているのか・・・いろんな疑問が浮かんでくる。

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posted by shirube's BLOG @seesaa at 23:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | 本との出会い
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