2008年01月28日

十三番目の陪審員

[目次]
プロローグ
第1部 人工冤罪
第2部 陪審法廷
エピローグ

あとがきに書かれた言葉を借りれば、“世にも奇妙な本格ミステリ”であり、とても楽しめた“逆本格”ミステリだった。

第1部の最初で、作家志望の主人公は、架空の殺人事件をしたてその犯人として捕らえられ、その経験を手記として出版しようと言う計画の犯人役=手記執筆者に誘われる。

DNA鑑定を逆手にとる人工冤罪計画が進行していき、主人公の血液型やDNAは別物に変わってしまう。この辺りは、血液型/DNA鑑定に関する知見が幾つか知り得て、そういう意味でも興味深かった。
しかし(・・・小説としては当然ながら)、思惑通りに容疑者として逮捕された作家志望の青年につきつけられたのは、聞かされていた「計画」とは違う話だった。

そして、もう1人の主人公が、この事件に取り込まれていく。弁護士である彼の役割は、誰も取り合わない容疑者の言い分を信じて青年の冤罪を晴らすこと。全容の知れない陰謀の謎は解けるのか?

第2部で、この事件は、「12人の浮かれる男」や「12人の優しい日本人」同様に、戦後初の陪審制で行われる法廷に舞台を移す。検察と弁護士の証人喚問における闘いが描かれる。「12人の・・・」のような陪審員の評議の模様が描かれているわけではないが、陪審制の下での裁判が行なわれることで、わかりやすい裁判が行なわれることが暗に陽に書かれている。

本編の話と何の関係もないように思われたプロローグの話が、最後の最後で活きて来る。評決が、無罪となっても有罪となっても、"陰謀"側の思惑通りだというジレンマが明らかになってくる。
ここまでの仕掛けをして、どんな結末にするのだろうかと期待して最終章を迎えたが、まずまずの落とし所に落ちたかなという感じ。
だけど、最後のその落とし所へ導くためのネタは、かなり安っぽい気がした。いくら"戦後初の陪審制"と言っても、そりゃあないだろうと私は思った。




第一部は、事件の全容は?真の犯人は?・・・という推理ものの面白さ。第二部は、検察と弁護士の攻守交替しながらの攻防の成り行きを見守る法廷ものの面白さが楽しめる。そして、全体としては、民主的国家での裁判は陪審制であるべきだと言う作者の主張が色濃く出た社会ものになっている。最後の一面は、終盤強く出すぎて、逆に興味をそがれた観もある。

1998年単行本として刊行され、2001年8月文庫本化。裁判員制については、"文庫版のためのそえがき"で軽く触れているだけで、賛成/反対の話にはなっていない。

「十三番目の陪審員」というタイトルは、私がこの本を読んだきっかけとしてはかなり大きな要素となったが、話の内容からするとちょっと思わせぶりでトリッキーと言う気がする。2重3重にトリッキーで、それ故に良いタイトルだと思う。

posted by shirube's BLOG @seesaa at 20:18 | Comment(0) | TrackBack(1) | 本との出会い
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