2012年11月28日

官邸から見た原発事故の真実/光文社新書 [558]

2012年1月初版発行。
事故直後の3月29日から5か月余日、内閣官房参与を務めた原子力工学の専門家が、緊急事態において直面した現実と、極限状況で求められた判断を語る書。

【目次】
◎第一部 官邸から見た原発事故の真実

◎第二部 政府が答えるべき「国民の七つの疑問」
第一の疑問 原子力発電所の安全性への疑問
第二の疑問 使用済み燃料の長期保管への疑問
第三の疑問 放射性廃棄物の最終処分への疑問
第四の疑問 核燃料サイクルの実現性への疑問
第五の疑問 環境中放射能の長期的影響への疑問
第六の疑問 社会心理的な影響への疑問
第七の疑問 原子力発電のコストへの疑問

◎第三部 新たなエネルギー社会と参加型民主主義

著者は、1951年生まれで、東京大学工学部原子力工学科卒業後、同大医学部放射線健康管理学教室研究生。その後東京大学大学院工学系研究科原子力工学専門課程修了。核燃料サイクルの環境安全研究の工学博士。民間企業の原子力事業部にて、六ヶ所村核燃料サイクル施設安全審査プロジェクトに参画。米国の国立研究所にて、高レベル放射性廃棄物最終処分プロジェクトに参画。

原子力発電推進サイドで仕事をしてきた人が、2011年の福島原発事故を経験して何を語るのか、とても興味深い。

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2012年10月23日

震える牛

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震える牛
相場 英雄

2012年2月初版発行。
表題を読んでも、何の話かさっぱり想像できなかったが、読んでいるうちになるほどうまいタイトルだと思った。
話は、継続捜査担当の刑事が、発生から2年が経つ未解決事案の居酒屋強盗殺人事件の捜査を命じられるところかた始まる。初動捜査では犯人を「金目当ての不良外国人」に絞り込んだ事件であるが、継続捜査担当刑事が事件現場周辺の目撃証言を徹底的に洗い直すと、そうではないだろうという方向性が出てきた。
事件の際、居酒屋店員以外に、互いに面識のない獣医師と産廃業者の2人の客が殺されていたのだが、彼らの繋がりを探るにつれて、大型商業施設の地方進出に伴う地元商店街の苦境の問題や加工食品の安全の問題が顕在化していく。
事件推理ものというよりも、その形式で語られる社会問題啓発ものだ。
シャッター街に象徴的な地方都市衰退の問題と、食肉「偽装」事件に表れた食の安全問題を考える。

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2012年10月20日

パズル・パレス

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パズル・パレス 上 (角川文庫)
ダン・ブラウン 熊谷 千寿
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パズル・パレス 下 (角川文庫)
ダン・ブラウン 越前 敏弥

「天使と悪魔」(2000年)や「ダ・ヴィンチ・コード」(2003年)の作者ダン・ブラウンの処女作で1998年の作。

アメリカ国家安全保障局のスーパーコンピュータが、元局員に狙われるという話。話は、パスワードを獲得する攻防で、「天使と悪魔」や「ダ・ヴィンチ・コード」のような宗教色がないので、映画化された2作よりもずっとわかり易く今日的。話の内容はほとんどスパイアクション映画的に展開していく。当然のように話は2転3転して後半に進むにつれて話に引き込まれて本から離れられなくなり、読む速度が高速化してしまう。ただし、最後の「推理」にはイライラした。紆余屈折を経て、私が最初に頭に浮かべた答えがそのまま解答だったのには少しガッカリ。まあ、最後の謎解きを読者が先行して推理できるようにして優越感を持たせて喜ばせる手法なのかもしれない。

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2012年05月13日

小説「マグマ」、面白かった

"ハゲタカ"ファンドが、買い取った「日本地熱開発」会社の再生をするために奔走する。「ハゲタカ」の作者が描く大型経済情報小説。
原発の陰で見捨てられ続けてきた地熱発電…政治家、研究者、投資家のそれぞれの思惑。
2008年の文庫本化だが、単行本の発行は2006年。したがって話の中に、2011年3月の原発事故の話は当然出てこないが、脱原発が叫ばれる311以後の今この本を読むと、非常に興味深いものがある。


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地図作成の面白さ「地図の科学」

前半は、地図の関する一般知識の復習で退屈だったが、後半は地図を作る作業はどんなものかが語られ、結構興味深かった。国土地理院で地形図作成に携わり、その後地図会社に勤務した著者ならではの話というところだ。古い本にも類書はあると思うが、2010年10月発行の本らしくWEB上の地図に関しても言及されていて、地図に興味のある人にはそれなりの楽しめる1冊かと思う。

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2011年11月30日

福島 原発と人びと (岩波新書)

福島 原発と人びと (岩波新書)
広河 隆一
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多くの人に是非読んでいただきたいお勧めの本。
発生直後から現地取材を重ねてきた著者が、写真多数を載せて事故直後の福島を克明に報告。あわせて、チェルノブイリ事故から学ぶべきことと、「福島」を対照してみる。
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2011年08月01日

インターセックス

インターセックスが何を意味するのかも知らずに何故か気になって手に取った本だった。460頁の大著だが、スラスラとほとんど一気に読めた(本当は徹夜して一晩で読んでしまいたいところだったが、自重して午前3時に中断し、睡眠休憩が入ったので一気読みではない)。
一応のジャンルは「医学サスペンス」に入るのだろうか。サスペンス仕立てにしなくても読み進めたくなる内容だが、サスペンス仕立てであることで、読むスピードが速まったことも確かだ。


インターセックスとは、男女どちらでもない性器官をもっていることを指す。そんな人々の苦悩を、一人の女医を主人公にして、様々なインターセックス「患者」たちとその家族、医師たちの葛藤を描いている。
「ひとは男女である前に人間だ」と説く主人公が、高度医療の聖地のような病院を舞台に活躍し、医療の錯誤と問題点、そして人間の尊厳を問う。

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2011年02月07日

「勝間さん、努力で幸せになれますか」を読んだ

「勝間さん、努力で幸せになれますか」(朝日新聞社)を読んだ。勝間和代と香山リカの対談集である。香山の本は何冊か読んでいるが、勝間の本は読んだことがない。二人のスタンスは対極にあるかに見える。しかし、自分にはその両方があることを痛感する。期待せずに読み始めたが意外と面白かった。

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2010年10月10日

温暖化論のホンネ

環境ジャーナリスト・枝廣淳子氏、温暖化予測の科学者・江守正多氏、そして環境問題に関連する多くの著作をもつ大学教授・武田邦彦氏の三者の鼎談。
個々人の著作やTV番組の中の討論では、水と油のような温暖化脅威論と懐疑論という立場に見える江守と武田が、「温暖化」に関して意外と近い考え方をしていたりするのが面白い。それぞれの思惑がTV討論と言った場でどのように表現されるのかが伺えて興味深い。何が共通理解で、何が対立事項なのか・・・・温暖化を考える上で興味ある1冊だ。

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2010年03月10日

「廃用身」

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廃用身 (幻冬舎文庫)
久坂部 羊
2003年単行本 2005年文庫化

文庫本裏表紙の内容説明には以下のようにある。

廃用身とは、脳梗塞などの麻痺で動かず回復しない手足をいう。神戸で老人医療にあたる医師漆原は、心身の不自由な患者の画期的療法を思いつく。それは廃用身の切断だった。患者の同意の下、次々に実践する漆原を、やがてマスコミがかぎつけ悪魔の医師として告発していく―。

私は廃用身という言葉も知らなかったが、そのような手足を持つことの苦痛や介護の大変さをこの本で知った。

麻痺で身体のお荷物になった老人の四肢を切断する治療が「Aケア」。その治療は本当に患者のためになるのか・・・「患者」は四肢を切断したことを後悔してはいないのか?介護する側(家族そして介護従事者)はどうなのか?
あるときは自分を「患者」の立場にして読む。あるときは、「患者」の家族の立場になって考える。介護従事者になったり医師の立場にもなる。
かなりショッキングな内容であり重い話だが、どんどん引き込まれた。

小説は、「Aケア」を考案した医師漆原の自著による「Aケア」療法紹介書とそれに付記された異様に長い編集部註で構成されている。
前半は、漆原の「Aケア」療法の自著本文である。療法を考案するにいたる経緯、手術第一例から最終例までの顛末が記されている。療法考案者側の視点からは「Aケア」療法がすばらしい療法に思えてくる。

後半は、編集者がこの本の出版前後の「Aケア」がらみの騒動の顛末を記している。「Aケア」療法を悪魔の所業だと糾弾するマスコミによる一連の記事を取り上げ、その内容を検証した編集者矢倉の見聞記である。記事は糾弾側の視点であり、見聞記は比較的中立的立場である人の視点で「Aケア」が語られる。読みながら、前半の漆原自著を読んでいたときとは、「Aケア」に対する自分の評価が微妙に変わってきているのがわかって面白かった。

前半の手記では順調で効果的に思えた「Aケア」療法だが、後半に入ると療法を糾弾する報道があり、医師漆原は追い込まれていく。はじめは報道に反論せずノーコメントを貫いていた彼は、やがて反論し失踪しそして終幕を迎える。漆原は?患者は?患者の家族は?・・・漆原の家族は?漆原の友人知人は?・・・波紋は広がる。
医師漆原は純粋に患者のためをだけを考えて患者に療法を薦めているのか・・・いろんな疑問が浮かんでくる。

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2010年01月25日

当確への布石

第5回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞受賞作(受賞作品を大幅改稿して単行本発刊)の文庫化。
大学の准教授をしている女主人公は、TVのワイドショー番組の有名コメンテータでありかつ犯罪被害者救済活動を続けてきていた。そんな彼女が衆議院統一補欠選挙への出馬を決めると、元犯罪者のプライバシーを侵害するビラ撒きで騒ぎを起こす団体「凶悪犯罪抑止連合会」から推薦状が届く。戸惑う主人公は、教え子の夫である元刑事に相談する。

抑止連の正体は?選挙の行方は?−−−上巻は、比較的シンプルに選挙戦と抑止連の捜査を描くが、下巻になると話は一挙に複雑化していく。
雑誌記者の書く記事に振り回される選挙運動、抉り出される女主人公の過去、主人公の周辺登場人物のそれぞれの過去も"現在"に絡んでくる。抑止連首謀者とそれに連なる人物たちの思惑・・・。

網の目のように関連づく補選のカラクリが次第に見えてくる。ミステリーであり、「本格選挙小説」であり、犯罪被害者問題を問う社会小説でもある。実に面白かった。でも、結末はちょっとあっけなかったかなあ・・・。

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2010年01月09日

脳内出血

身元不明の変死体と論文捏造という珍しい組合せを題材にした医療ミステリー。

昨年、この著者の本を何冊か--「摘出」、「瘢痕」、「昏睡」、「特効薬」、「全身麻酔」、「死の点滴」--読んだ。これらは、手術ミスや薬剤使用ミス、新薬開発などにからんだ医学・医療界の闇を描く医療ミステリーで、面白くて次々と読んだのだが、この作品「脳内出血」は少し異色だ。医学部がらみの話ではあるが、むしろ刑事もののミステリーとしての要素が強い。舞台は、医学部ではなくて理学部や工学部でも成り立ちそうだ。
その分、医療ミステリーとしても刑事ミステリーとしても中途半端と言えるかもしれない。
身元不明死体の身元も犯人も「種明かし」の前にわかってしまうし、最後の「どんでんがえし」はまるで必要性を感じない「お笑い」ネタになっている。

医療ものとしても刑事ものとしても中途半端というのが、ある意味この本の魅力かもしれない。その分気楽に読める。
論文捏造に関係する登場人物のそれぞれの立場が面白いというか、楽しめた。

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2009年12月30日

理想の島?エンデの島


作家の門倉が、雑誌の取材のために訪れた伊豆諸島の奥ノ霧島は、ミヒャエル・エンデの「パンを買う金と、株に投機する金は違うはずだ」という言葉を具現化した、まさに理想の島だった。取材するにつれて魅せられていく島の状況・・・・善意のボランティアに支えられた病院や議会、コミュニティの信頼関係を醸成しボランティア活動を円滑化さえする地域通貨。
『失われた地平線』の桃源郷「シャングリラ」とはまた別のまさに現代風の理想郷がそこにあった。裏表紙のこの本の紹介文には、「愛の経済小説」という表記があるが、人間の真の幸福と理想かもしれない小社会のひとつの回答がここに描かれている。
しかし、理想社会も結局は人材の問題なのかなっていう気も少しした。

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2009年06月29日

転生

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転生 (小学館文庫)
仙川 環
2006/10/01

今月はじめに読んだこの著者のデビュー作『感染』に続く医療ミステリー第二弾!
元大手新聞社記者で現在フリーライターの女性深沢岬は、仕事の依頼で待ち合わせたホテルのロビーで、ベビーカーに乗った赤ん坊を目の前に放置され、「その子はあなたの娘だ。引き取ってもらいたい」という電話を受ける。出産どころか妊娠の経験もない岬だが、唯一思い当たる前歴があった。

たった一つの手がかりを追ううちに産婦人科医殺人事件の容疑者になってしまう岬。「前歴」をどうしても隠さねばならない彼女は、刑事から逃亡しながら、記者経験を生かして真相究明に奔走する。

主人公と刑事、真犯人との緊迫しためまぐるしい攻防がページを駆ける。やがて明かされる真実。『感染』と同様に最近の医学(生物学?)テーマを取り込んだ医療ミステリーが面白くて、文庫本317ページを1日で読んだ。

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2009年06月27日

新聞が面白くない理由

[目次]
プロローグ
第1部 記者クラブの堕落
 国民の税金で接待される新聞記者たち
 新都庁の豪華記者クラブ
 宮内記者会の「白紙領収書」
便宜供与で曲がるペン
 「権力の監視機関」か「利権の受け皿」か
 新聞記者操作マニュアル
第2部 朝日新聞社の正体
 朝日のリクルート汚染
 広告掲載拒否事件
 朝日のタブー「情実入社」と「天下り」
 トップ人事の後遺症
 権力から独立できない「社会の公器」
 サイドビジネスの陥穽
 押さえ込まれる社内言論
第3部 消えるジャーナリズム精神
 新聞記者が巻き込まれた『論際』汚染
 他のメディアの記者を排除する新聞記者
 新聞に個性と魅力が問われるとき

衰退一途の日本のジャーナリズムの根本の病巣が「記者クラブ」の存在にあると説く第1部では、官公庁と癒着を続ける記者クラブの闇を暴く。記者クラブは官公庁だけでなくそれに準じる民間企業にまで巣食っている。広いスペース、税金から支出される通信費、光熱費……。官公庁から便宜供与を受けて他のメディアを締め出す。

記者クラブに税金がどの程使われているのか、その結果として報道がどれだけゆがんだものになっているのか、行政側と報道側の両者の問題点が明らかになっていく。

他者を批判する限りは、自らの襟を正しておかなければならないという基本的な倫理観が「新聞」には欠如している。 第2部では、記者クラブから離れて、大新聞社の腐敗を一例にあげて、日本の大手ジャーナリズムを批判する。


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2009年06月01日

感染

ウイルス研究を専門に研究医の主人公の夫は、アメリカ留学中に臓器移植を経験している第一線の外科医だが、いまは家庭での会話は殆ど無い。ある晩その夫に掛かってきた謎の電話、夫は"女からの呼び出しに"出かけていったまま音信不通になる。
世間では幼児誘拐殺人事件や放火事件が続発していたが、夫の前妻との間の子が誘拐され、やがて幼子は焼死体で発見される。
連続する事件と夫の失踪との関係は? 夫の失踪の裏に画された危険な策謀は、医学界を揺るがす大きな事件に発展する。「感染」というタイトルが暗示する事件の真相と夫の経歴にある臓器移植が複雑に織り成すストーリー。

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2009年05月17日

丸腰国家―軍隊を放棄したコスタリカ

[目次]
第1部 「丸腰国家」コスタリカの真実
 第1章 コスタリカはどうやって軍隊をなくしたのか?
 第2章 軍隊がなくても大丈夫なのか?
 第3章 コスタリカには本当に軍隊がないのか?
 第4章 コスタリカは軍隊を持てるのか?
第2部 「丸腰国家」をつくる人たち
 第5章 コスタリカ人とはいかなる人たちか?
 第6章 コスタリカ人が考える平和とは何か?
 第7章 コスタリカは「平和のパラダイス」か?
 第8章 還暦を迎えた「軍隊をすてた国」)

中央アメリカの国コスタリカは、1948年に軍隊を放棄して「丸腰」になった。その歴史や国民性を見ていく。軍隊がなくてもやっていけるのか、ほんとうに軍隊がないのかを検証していく。

非武装を「理想」として見るのではなく、「現実」に軍隊をなくした国。軍事費をなくすことで、その分を教育や医療にまわせる。その結果、教育も医療も無料だという!

コスタリカが軍隊なしにやっていけるのは、国の規模・地政的な位置付けや米国をはじめとする周辺国との関係が大きく作用している。他の国が同じように「丸腰」でやっていけるのかどうかの普遍性を考える上では、それほど参考にならないのかもしれない。でも、ひとつの実例がここにあるという意味では、やはり注目に値すると思う。

第1部では、歴史や現状をできるだけ客観的に解説している。
第2部では、自分の体験を示しながら、コスタリカの「人」がどんなであるかを見極めようとしている。「平和」に対する、コスタリカ人と日本人の見方の違いが興味深い。

第6章の終盤で、「刑務所には塀がない」という項があり、囚人たちが楽園の住人のような生活をしているが、それは、「彼らが犯罪に走ったのは、人権というものを深く理解していなかったからです。それは彼ら自身の人権が尊重されなかった証でもあります。だから、ここではまず、彼ら自身の人権をできるだけ尊重することで人権意識を目覚めさせ、更生を図っているのですよ」という考えからなのだという。「目からうろこ」的な考え方だなと思った。

第7章では、コスタリカが「平和のパラダイス」なのか?を見ていく。非武装とどこまで関係しているかは論議せずに、政治腐敗・政治不信・貧困・環境破壊・賄賂の横行・人権問題など、負の現状が提示されている。前章で、教育や医療の場での無料化、「環境先進国」などの明るい現状が語られただけに、この章での影の一面は印象的だ。

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2009年04月20日

わかりやすい iPS細胞 の本

[目次]
はじめに
1章 “ES細胞”は生命の起源にさかのぼる
2章 細胞の先祖返りしないわけ
3章 なぜ身体は古びないのか?
4章 再生はいつも身体で起きている
5章 再生医療の時代へ
6章 iPS細胞が誕生した!
7章 再生医療レースのはじまり
8章 再生する力で人工臓器をつくる
終章 “知”がヒトを変えていく
あとがき


これまで読んだ素人向けiPS細胞の解説書のなか(そんなに多くないけれど)で、素人の私に最もわかりやすい本だったなと思う。

再生、幹細胞、ES細胞、クローン技術の話から順を追った十分な解説があり、ES細胞とiPS細胞の違いや位置付けがよくわかった。そして、現時点でiPS細胞研究が抱えている問題点も提示され、再生医療の観点からiPS細胞にどれだけのものが期待できるのかもわかった。

iPS細胞ができたから万事解決というわけにはまだまだならないらしい。まだ大学院博士課程在籍中だという著者の今後の活躍にも注目したいなと思う。

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2009年04月08日

イントゥルーダー

イントゥルーダー

昨年8月に同じ著者の「ペトロバグ」という小説を読んで面白いなと思ったが、この作品も面白かった。

1999年単行本発出で、サントリーミステリー大賞・読者賞ダブル受賞作ということだ。

表紙裏扉に書いてあるあらすじに、 25年前に別れた恋人から突然の連絡が。「あなたの息子が重体です」。日本を代表するコンピュータ開発者の「私」に息子がいたなんて。このまま一度も会うことなく死んでしまうのか…。奇しくも天才プログラマーとして活躍する息子のデータを巡って、「私」は、原発建設がからまったハイテク犯罪の壮絶な渦中に巻き込まれていく。
とある。

発端から終結までの行き詰まる10日間、読み始めたらとまらない一気読みの377ページ。


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2009年03月18日

邪馬台国はどこですか?

[目次]
悟りを開いたのはいつですか?
邪馬台国はどこですか?
聖徳太子はだれですか?
謀叛の動機はなんですか?
維新が起きたのはなぜですか?
奇蹟はどのようになされたのですか?


「タイムスリップ釈迦如来」から読み始め、「タイムスリップ明治維新」、「タイムスリップ森鴎外」とこの著者の小説を読んできたが、その"解説"に必ず記述が出てきたのがこの本で、気になっていたがようやく読むことができた。
釈迦や明治維新、森鴎外に邪馬台国を扱った話がどう関係しているんだろうと思ったが、本を開いたら納得した。タイムスリップシリーズのような1話完結の長編小説ではなく、短編6話収録という体裁だ。ただし、バラバラの6話ではなく、カウンター席だけの地下一階の店に客が三人集まって歴史談義をするという構成で、"歴史ミステリ連作集"というらしい。

在野の歴史研究家らしい謎の人物宮田六郎が語る奇想天外な仮説は、某私立大学文学部の世界史の助手早乙女静香との論戦が必至。初対面の日の論戦は、「ブッダは悟りなんか開いてない」という宮田の爆弾発言から始まった。この話が、「タイムスリップ釈迦如来」に発展していったような気もする。

そして、再開の夜は、邪馬台国がどこにあったかという問題。宮田の説は、九州説でも畿内説でもなく、なんと東北岩手だという。彼の話を聞いているうちに、その説に私は納得してしまった。最後に示された邪馬台国を示唆する有名な地名に、なぜ今まで一度も連想しなかったのかと逆に不思議に思えたほどだ。

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